TCFD提言に基づく情報開示

当社グループにおける気候変動に対する取り組みの考え方

2015年12月におけるパリ協定の採択以降、官民において気候変動に対する取り組みが加速しています。
日本政府においても、2020年10月に「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする『2050年カーボンニュートラル』」、すなわち、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しました。

このような社会環境の変化の中、当社グループにおいても、事業継続を目的としたサステナブルに対する総合的な方針(サステナビリティ基本方針:https://www.iwaicosmo-hd.jp/esg/policy.html)を定め、事業活動において、温室効果ガス排出量の削減を中心とした環境問題の解決に真摯に向き合い、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に向けた取り組みを強化いたします。

当社グループでは、2021年8月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)の趣旨へ賛同を表明いたしました。
当社グループが長期的に事業を継続していくために、気候変動が与える事業への影響を認識するとともに、リスク等とどのように向き合い、そして対応していくべきかという観点から、TCFDが開示を推奨する気候関連リスク等に関する「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の各項目における当社グループの考え方を整理し開示いたします。

ガバナンス

気候変動リスクに関するガバナンス体制

当社グループは、サステナブルに関する取り組みについて、当社グループの事業活動を通じて、環境問題の解決や社会貢献への取り組み、適正なガバナンス体制の構築を行っております。

取締役会等で意思決定された重要事項に関して、担当取締役は、その活動内容や目標に対する進捗状況等について定期的に報告し、取締役会がその評価を行っております。

気候変動リスクに関するガバナンス体制図

なお、当社グループ全体にかかるガバナンス体制に関しましては、こちらでご覧いただけます。

戦略

気候変動に伴う機会

気候変動による機会及び事業活動への影響を以下の通り認識しております。

  • 気候変動を含む環境問題の解決をテーマにした企業紹介や金融商品の提供による投資家の投資意欲の高まり
  • 気候変動を含む環境問題に積極的に取り組む企業等への資金調達支援(IPO・PO等の引受け)需要の高まり
  • 事業活動における環境への取り組みやエコ頒布品等の積極的活用によって、お客様や従業員の環境保全への意識の高まり
  • ステークホルダー(株主、お客様、取引事業者、従業員等)との対話の中で、環境問題の解決に向けた取り組みによる持続的な社会的価値の創出
  • 気候変動対応を含む環境問題への解決に向けた積極的な取り組み、および開示による企業評価の向上

気候変動に伴うリスク及び当社グループへの影響

気候変動によるリスクについて、移行リスクと物理リスクに分類し、各々のリスクによる当社グループの事業活動への影響を以下の通り認識し、リスク回避および低減に向けた対応を検討しております。

分類 リスク 影響 度合 対応
移行リスク 政策・
制度・
法規制
炭素税の導入や
新たな法規制の制定
  • 永続的な炭素税導入や炭素エネルギーの高騰
  • クリーンエネルギーによる一時的なコスト増
  • EV車輌の導入検討
  • オフィスの使用電力について、クリーンエネルギー由来のものへ段階的に移行を検討
商品・
金融サービス
収益機会の逸失
  • 環境に配慮した商品やサービスの取扱いが遅延、または、提供不足による収益機会の逸失
  • 環境問題の解決に積極的に取り組む企業等に投資する金融商品の取扱い
企業評価 企業評価の下落
  • 気候変動を含む環境への配慮を怠った姿勢や、不十分な情報開示による企業評価の低下、株価の下落
  • 金融機関からの資金借入コストの増加
  • 優秀な人材確保の困難化、人材の流出
  • 気候変動に係る政策等で企業に求められる姿勢や、事業活動における取り組み等の強化
  • 投資家やお客様等への積極的な開示
お客様行動 企業評判の低下・悪化
  • 企業評価低下によるお客様離れ
  • 業績への影響(預り資産残高、収益の減少)
  • 気候変動に即した適切な事業活動
  • お客様の投資行動を考慮した適切な営業活動
物理リスク 営業基盤インフラ 事業継続対応・復旧コストの増加
  • 気候変動とりわけ、気温の上昇によってもたらされる異常気象による降水や洪水被害、台風等の影響により営業店舗や外部委託先のデータセンター、ネットワーク設備等の被災
  • 営業活動、事業継続の制限
  • BCPにおける、気候変動の影響により引き起こされる災害シナリオの設定および定期的な見直し
  • 営業店舗の新設や見直しの際は、洪水被害を想定し立地条件を考慮
  • データセンター等の外部委託先への定期モニタリング
社会インフラ 社会インフラ・ライフライン機能の停止
  • 水不足、停電等に伴うライフラインの麻痺
  • 郵送物配達等の停滞・遅延
  • 自然災害時におけるBCPマニュアルの整備・訓練実施
  • 紙書類のデジタル化・ペーパレス化の推進
人的資源 人的資源の損失・不足
  • 重度の熱中症や感染症による当社グループ従業員を含む人的資源の不足・人的損害が発生
  • 組織内における業務知識や手順等の共有
  • テレワークを含む多様な働き方の定着

シナリオに基づく財務影響

気候変動における移行リスクの管理上、重要な指標と位置付ける温室効果ガス排出に係る「炭素税」と、クリーンエネルギー移行に伴う「エネルギーコスト」への影響について、IEA(国際エネルギー機関)の提唱するシナリオのうち、パリ協定で定められた産業革命以前の気温と比較し2100年の気温上昇を2℃を目標に抑えるシナリオ(Sustainable Development scenario)、および、1.5℃前後に抑えるシナリオ(Net Zero Emissions by 2050 scenario:2050年ネットゼロ達成、2100年の気温上昇1.5℃)において想定される当社グループ財務への影響を評価しております。
なお、現時点において、気候変動の移行リスクによる財務への影響は軽微と考えております。

リスク 影響 財務への影響額(2030年時点)
1.5℃未満
シナリオ
2℃未満
シナリオ
移行リスク 炭素価格(炭素税) 炭素税
(ドル/t-CO2) ※1
130 100
炭素税の年間負担額 ※2 約11.0百万円/年
のコスト増
約8.5百万円/年
のコスト増
クリーンエネルギー需要 クリーンエネルギー需要の
拡大による電気料金の増額
(円/kWh) ※3
1~3円
当社グループ全体の増加コスト ※4 約0.8~2.4百万円/年のコスト増

気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセス 及び
気候関連リスクにおける各プロセスの総合的リスク管理への統合

当社グループにおける総合リスクの管理業務の運営は、取締役会からリスク管理統括者(リスク管理担当取締役)へ委嘱され、リスク管理統括者は、各リスク管理所管部署からの報告、リスク管理プロセス施策の立案・実施、各リスクのモニタリング状況、および経営上の重要事項の取締役会への報告等の役割を担い、その業務運営を取締役会が監視しております。

また、リスク管理統括者が議長となり、各リスク管理所管部門長から構成されるリスク管理コミッティを設置し、総合リスクに関するリスクの識別・評価および管理の施策・運営に関する協議を行っております。

当社グループにおける気候関連リスクの分類

当社グループでは、気候変動リスクを「業務運営上のリスク」および「事業継続上のリスク」に分類して管理し、気候変動リスクのうち『移行リスク』を「業務運営上のリスク」、『物理リスク』を「事業継続上のリスク」として認識し、当社グループにおける総合的なリスクとして管理しております。
気候変動による様々な外部環境の変化については、政策や制度、法規則の変更やエネルギー市場の変化など脱炭素社会への移行に伴うリスクと、異常気象による気温の上昇や、それによってもたらされる自然災害により影響を受ける物理的なリスクを識別しております。

また、それぞれのリスクについて分類し、当社グループへの影響を評価し、リスク回避および低減に向けた各施策について検討し実施いたします。

指標と目標

目標

当社グループでは、2012年5月(2013年3月期)の証券子会社の合併以降、オフィスにおける電気使用の効率改善や、低燃費な業務用車輌等への移行など、 CO2排出量の削減に取り組んで参りました。電気使用の効率改善については、冬季・夏季におけるオフィス内空調の適正温度への設定(エコ設定)、夏季期間中のクールビスの展開、電気製品や照明の小まめな節電など、従業員一人ひとりが意識的に取り組む「エコ活動」を積極的に実施し、消費エネルギーの削減を実践しています。

当社グループは、引き続きCO2排出量の削減に取り組み、GHGプロトコルにおけるスコープ1およびスコープ2に属する業務用車輌の利用およびオフィスの電気使用によるCO2排出量について、2025年3月期までに55%以上の削減2030年3月期までに70%以上の削減(いずれも、2013年3月期比)の実現を目指します。

なお、当社グループにおける重要な資産や主たる事業活動において、多大な「物理リスク」の対応については、BCP(事業継続計画)や危機管理マニュアル等で対応方針を定めて参ります。気候関連の目標に関連付けられる役員報酬や、企業内で独自に排出量に価格を付け、設備投資等の判断に活用できるICP(インターナルカーボンプライシング)につきましては、引き続き脱炭素の取り組みの推進とともに、将来的に検討して参ります。

当社グループの取り組み事例
Scope1 業務用車輌の走行により
排出されるCO2排出量
(燃料の燃焼などによる直接排出)
≪営業車輛について≫
  • 低燃費の営業車輛を採用
Scope2 オフィスでの電気使用に伴う
CO2排出量
(電気等の使用による間接排出)
≪施設設備について≫
  • 大阪本店ビルについて、電気照明を「LED」照明へ変更
  • 東京本部ビルは「ハイブリッド輻射空調システム」「LED」照明を採用する最先端の省エネビル
  • 各営業店については、可能な拠点から順次「LED」照明へ変更
≪エコ活動≫
  • 冬季・夏季におけるオフィス内の空調温度のエコ設定(夏季28℃、冬季20℃程度)
  • 夏季における「クールビズ」の実施
  • 照明機器、電気機器等の小まめな節電(パソコンやプリンタなど使用しないOA機器の待機電力の削減)
  • 2アップ3ダウン運動(エレベーターではなく階段の積極利用)

モニタリング指標

当社では、気候関連リスクを評価・管理するための指標として、当社グループ事業における主たるCO2排出源である以下の項目をモニタリングし、削減目標を掲げております。

(t-CO2)
2013年
3月期
2015年
3月期
2025年
3月期
目標
2030年
3月期
目標
営業車輌の使用
によるCO2排出量
442 300 - -
電力消費に伴う
CO2排出量
1,839 1,286 - -
合計 2,280 1,585 1,000 680
過去の温室効果ガス排出量と削減目標のグラフ